古民家 リノベーション

耐震改修に補助金を使うための流れ

耐震改修に補助金を使い行うための流れについては、(私が住んでいる所の話で言うと)
まずは依頼主が市へ耐震診断の依頼の申請をする。
市の決裁が下り、市から建築士事務所協会へ耐震診断士の派遣の要請がかかる。
建築士事務所協会を経て登録されている診断士が派遣される、という仕組みなっている。 
信頼できる耐震診断士が派遣されます。ということになっている。
それで、私も派遣の依頼を受けて診断にあたるのだが、大変な割に報酬が少ない。
なので、あまりこの仕事をする人はいないのだけれど、私は床下、小屋裏など、
人の家を見るのが好きなので続けている。
裏側を見ると、作った大工さんがまじめな人か、適当な人か、なんとなくわかる(笑)

古民家改修の実状

耐震改修補助金担当の市役所の方と話していると、
古民家を格安物件として購入し補助金で耐震改修したいという人が時々現れるのだとか。
空き家対策も相まってのことだろう。
そのたびに「耐震改修は難しいですよ。」と、お伝えしている。という。
現在の法律に沿った耐震改修をするとなると、伝統工法の良さがなくなってしまう。
構造の考え方が現在の法律とは全然別なのだ。
なので古民家を改修するのに補助金を使うのは難しい。
補助金を利用して古民家改修をすると、それは古民家じゃなくなってしまう。
伝統的な建物が空き家になっているケースが多く、
なんだか、ジレンマを感じてしまう。

建築基準法

建築基準法はGHQが入って作られたもので、伝統工法はないがしろにされているという人がいた。
戦後、急いでたくさん家を建てなければいけなかったため、
ある程度の品質水準をわかりやすく作り上げる仕組みが必要だったのだろう。
現行法の木造の構造計算は、経験則ではなく安全性を数値化し、
容易に判断ができるようにシステマチックにできている。

伝統工法と現在の工法の違い

具体的に言うと、伝統工法は柱と梁などの横架材でできていて、
揺れると土壁の縁が崩れ木材同士がめり込みことで、揺れの力を吸収する。
揺れが収まった後には、壊れた部分が目に見えるので修復することも比較的容易だ。
反して現在の法律の木造建物は、壁を筋交いや面材で強くして建物自体を強くする。
伝統工法は柔らかく揺れを吸収するのに対して、
今の家はガチガチに硬い家!という感じ。

なので耐震診断も改修もやり方が全然違う。
伝統工法の改修のやり方は、あまり普及していない。
というのも、計算で判定しにくいからだ。
数字で測れないということもないがとても難解。
なので普及しないのだろう。

古民家の人気

しかし、ここにきて古民家の人気が高まってきている。
コロナで働き方が変わり、自宅での過ごし方に対する考え方が変わってきたのだろう。
あるいは、「安く買って田舎暮らしをしたい」ということだろか。
その家と周辺環境も大切にしたいという思いもあってだと思うし、そうであってほしい。
だからと言って、安全でない家に暮らすのは強要できない。
なので、伝統住宅に安全に暮らすために大切なことを少しお伝えしたい。

古民家で気を付けるべき点

過去、地震で壊れる伝統住宅の多くは、シロアリの被害にあっていた。
なのでシロアリ点検は豆に行った方がいい。
床下に潜り、シロアリの被害がないか目で見て確認する。

蟻道:白蟻が通るトンネル状の道。シロアリは体が乾くことを嫌ってトンネルを作って木材にたどり着く。


伝統住宅はシロアリのことも考慮して、床が高く床下に壁をつくらない作りになっている。
開放的にすることで、シロアリの嫌う風通しを確保しているのと木材を湿気から守るため。
水分の多い木材は腐るうえに、シロアリの好物にもなる。
よく床下をふさぐ人がいる。そうなるとシロアリの餌食になりかねない。
従来の日本シロアリは地面から登ってくる。床下の通気は不可欠だ。

ほぞの状態も重要。健全なほぞがしっかり刺さっているか確認する。
建物を支える柱も重要で、柱の根元が腐っていたら継いで部分的に取り替える。
木材が腐るのは水分が多いため。また、含水率が高くなると強度も下がる。
なので雨漏りは厳禁。小屋裏の確認も必要。
建物全体の話になるが、
後から増築した部分がある場合、接合部分が弱点になってくる。
なので古い部分と新しい部分とが、構造的に力が作用しないように縁を切る。
基礎を一体にしたり、梁や土台どうしをくっつけないようにする。
このような配慮がない建物がほとんどで、その部分はどうにか対処しなくてはいけない。

まずは相談を!

と言っても、家によって特徴は千差万別。周辺環境や敷地の状態だったり、
その建物歴史だったり、いろんなことが絡んでくる。
建築士としても、悩ましいことが多くあったりもするが、
せめて、NGなことをしないようにわかっている人に相談することが大切だろう。

大工さんは作るのがプロで、構造の知識に乏しいことが多々ある。
弱点を知らないですぐに「できますよ」と言って改修してしまい後々の維持が難しくなったりする。
考える側の設計士と作る側の大工さんとで協力し合うことが大切だ。
今日もとある工務店で大工の一級技能士資格をお持ちの方とお話しした。
今の大工は大工ではないと(笑)
その腕を振るえる現場が増えるように、頑張らないと!

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