災害に強い敷地を考えてみる。

調整区域の夜明け 思い
調整区域の夜明け

建築士の仕事は多岐にわたる。
地方の建築士ともなると、いろんなことができないといけない。
都会だと、どこか秀でたところで勝負ができるかもしれない。
地方だといろんな相談が舞い込む。
改修だったり、新築だったり、土地の調査や造成だったり、店舗デザインだったり。
都会では耳慣れない、調整区域の開発行為もその一つだ。

では、調整区域とはなんぞや?というと、
都道府県では、土地の利用の仕方や街づくりについて計画を立てている。
都市として発展させていきましょう、という地域と、
ここは農業、漁業を大切に守りましょう!という地域、
あるいはそのどれでもない、計画外の地域。
自由にさせていては、土地の利用の仕方に不都合が生じるからだ。
また都市として発展させましょう!という都市計画地域の中には用途も決めている。
工業を優先するところに住宅街ができてしまうと、いずれ裁判沙汰になりかねない。
商業を優先するところも同じく。夜まで騒がしい!と苦情も出るだろう。
それぞれを発展していけるように、用途地域というのを設けている。

調整区域というのは一次産業を大切にすべき地域。ここは農業、漁業を大切に守りましょう!という地域だ。
第一次産業に従事している人が家を建てる分には、規制はないけれど、
それ以外の人が家を建てるには許可が必要になる。
各々の地域で緩和策が決められていたりするが、それでもいろんな書類をそろえたり、そこに建てなければいけない理由を提出したり、少し手間と時間がかかる。
他に不動産を持っている場合、建てられないこともある。
それも、各地域によって決まりが違ってくる。
それらの手続きの仕事は、地域に根付いた地方の設計事務所に頼んだ方がスムーズに事が運ぶ。

たまーに他県の仕事を頼まれたりするのだけど、
行政によって、気の配り方に特色がある。
ここ長崎の場合は、斜面に多くの家がすでに立ち並んでいるため、
崖に対しての緩和が緩く感じる。
今から規制を厳しくすると、家を建て替えられなくなるからだろう。
実際、長崎市内は地盤が良好なところが多いこともある。
また、歴史的な街並みを保全することも大切だと感じている。街の財産だから。
それでも近年造成した土地の場合はよく調べたほうがいい。
盛土と切土が混在した土地などは要注意だ。

急に住宅が増えてしまった場所などはどうしてもインフラが遅れたりする。
渋滞が起こるようになったり、雨水の処理がおいつかなかったり。
災害を抑えるためにも、街づくりの計画は重要だ。
規制がないからと安易に小規模な開発(小さな住宅街)を無秩序にたくさん作っては、
災害にも弱くなる。
ちょっと郊外だと規制が緩く地価も安いため小さな開発が多数発生してしまう。
人は、安い土地を買い求めて郊外へと流れていく。
そして人口減少もあいまって、都市部は虫食い状態となっていく。

私が住んでいるところは過疎化が進む調整区域で、あたりは田んぼや畑が多くある。
地形で言うと尾根の部分には住宅が立ち並び、扇状地部分には田んぼが広がっている。
開発が進まなかったがゆえに、人が住むべき場所が昔のままの形に残っている。
歴史の勉強でも習ったと思う。扇状地は河川のお陰で肥沃な大地となった。と。
そもそも、河川は氾濫するものでお陰で大地は肥えて豊かな農作物が育ってきたのだ。
そして田んぼは多少の冠水にも耐える。また、水を蓄えてとどめてもくれる。
最近は、放棄され荒れた田んぼが多くこの役割も果たさなくなってきたけども。
そもそも扇状地は、川の水が氾濫する場所なのだ。
建物を計画するときにはそのことを念頭に置いておかないといけない。

これから人口はどんどん減少していく。
あらたな開発は本当に必要なのか?その地域は、大丈夫なのか?
土地の歴史なども念頭に敷地を選ぶことも大切だと感じている。
そうすることで、災害に強い街づくりにつながるはず。
国土地理院の地図では過去の航空写真を見ることもできる。

今日は明るい内容を書こうと思っていたのに、
専門的な重い内容になってしまった。
でも、大切なことなので知っておいてもらいたい。
近年の集中豪雨の激しさは高まる一方なので。

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